焼酎造りを通して島にかける思い

「繋げていきたい」

人の気配を感じない・・・。そう思ったら、道を挟んで右にも左にも家がない。いや、正しく言えば家はある。でも、そこに人の姿がない。(ここで私の言う「家」とは、人(家族)の暮らしという意味)
青森から蔵見学にいらしたお客様を案内中、迷い込んだある集落の一角。そう、すぐこの前までは、縁側に座って夕涼みをするお年寄りの姿や、汗だくになりながら駆け回る子供達の姿があった。いや、あったであろう面影が確かにそこには残っていた。全ては「人」。人がそこに居てこそなのだ。暮らしがあり、会話があり、そして、そこにはそれぞれの意志や想いがあり、時が流れる。

ふと思い出した。以前、鹿児島のあるイベントでお会いした方の話を。「どれだけの企画を立て、どれだけの人が関わり、どれだけの回を重ねたとしても、そこに関わる全ての人の求める意志と高い意識と強い想いがなければそこに未来はない。発展はない。」人口減に歯止めをかけたいある地域の町おこしに関わるその方の話は、私に強い印象を残した。
始まりは、私達朝日酒造が年に一度、島の小中学生・高校生を対象として行っている「私達の島を伝えたい」コンクールの話からだった。このコンクールは、教育委員会や各学校の先生方の御協力を頂き、今年度で4回目となる。
私達は、このコンクールが、島の未来を担っていく子供達に、改めて島を見つめる機会となり、そこから新たな発見(喜界島の可能性を感じること)に繋がればと思っている。そして、「伝えたい」という子供達の想いの中には島への愛情と誇りがたっぷりと詰まっていて、その先には必ず島の「未来」が描かれていくと私達は信じている。そう、進学、就職のため島を離れたとしても、いずれ島に戻り、島で働き夢を持って生きていく、その意識を子供達に持ってもらえたら、そう願っているのだ。

私達は、蔵見学にいらっしゃるお客様の言葉(感想、質問)を通して喜界島の姿を様々な視点から見ることがある。島の観光、歴史、自然はもちろん、経済、産業のことまで。基幹作物であるサトウキビに、新しい農業(作物)へのチャレンジ、また、喜界島をオーガニックの島にと喜界島だからできる農業を考え始めた若者達。そして、島の素材を使った食品開発に、畜産、水産、更に、各集落独自のイベントや郷土芸能の伝承、音楽を通して島に活力を与える人達、等々~。そう、それらの全てが喜界島の未来の大きな力になる~。

そう考えた時、いつも意識するのは、焼酎屋として何ができるのかということ。まずは、「喜界島にこだわった焼酎造りを行う」こと。「焼酎造りは農業だ」と考え、13年前から完全無農薬で、除草剤、化学肥料は一切使用せず、焼酎の原料(黒糖)のためのサトウキビ栽培を行っている。更に、2年前からは焼酎の麹米用の米作りも始め、安全安心完全有機の焼酎造りを目指す。
そして、もう一つ、「黒糖焼酎を通して喜界島を伝える」ということ。「焼酎はいつも人の輪(和)の中にあり、焼酎のある所に人が集う」これは、島に生まれ育った私の幼い頃からの記憶。だから、私達は焼酎を通して人を、出会いを繋げていきたい。そして、その中で歴史や文化等、喜界島の全てを全国へ、世界へ伝えていきたい。

そう、それぞれの動きが繋がり、何かが生み出される。島の未来に繋がるための何かが。そのためには、物理的な条件(環境)と同じだけ、そこには気持ちのある人が~、

そんな事をあれこれと考えている間に、一本道に辿り着いた。あふれる緑とどこまでも続く青い海と空を目の前にして、隣で感動の声をあげるお客様に、喜界島の説明をまた少し加えて、「さぁ」、と心に声をかけ、畑の中の長い一本道を一気に下りた。

written by 喜禎ルミ
(喜界町「議会だより」より)